【石を絞る】勝てるはずのない競争で、非力な仕立屋が巨人に勝つ

愚かな鬼(巨人、悪魔)の話1060【石(とおぼしき物)を絞る】


Photo by Zeny Rosalina on Unsplash

こんにちは。サイト管理人そだひさこです。

きょうは、「石(とおぼしき物)を絞る」をご紹介します。
よく似たふたつの話型があります。

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「石(とおぼしき物)を絞る」あらすじ紹介

【1060】
巨人と貧しい仕立屋が競争をする。
巨人は石を拾って握り砕く。

仕立屋は石を拾うふりをしてポケットに入れておいたチーズを握る。
仕立屋の手からは水がしたたる。

巨人は、石から水を絞り出すことのできる仕立屋におびえる。
– – –
【1060A】
巨人と仕立屋が競争する。

どちらが力が強いかを、握手で比べることになる。
仕立屋は、鉄の手袋をつけて握手をし、巨人に勝つ。

+++++
国際昔話話型カタログより(文章はそだひさこが書きました)。
他の多くの話型と組み合わさって物語を構成しているようです。

1060Aでは、自分の手のかわりに「焼けた鉄の棒を差し出す」というのもあるそうです。

【仕立屋が巨人に勝つまでの道のり】の図


あらすじにはないのですが、巨人が勘違いをした結果から競争をすることになる話が私の印象にあるので、カッコで(勘違いされる)を入れてみました。
そもそも、勝てない相手に自分から競争を挑まないです…

このあとの吹き出しでも勘違いを入れています。

また、ここでは文字数節約のために「巨人」という言葉を使っていますが、意味としては「勝てない相手」です。勝てない相手に知恵で勝つという、小さなエピソードです。

(ダウンロード用のかけらでは「勝てない相手に知恵で勝つ」というひとかけらにする予定です。)

ストーリーを吹き出しで追ってみる

石を絞る競争

貧しい仕立屋が散歩をしている。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

今日は威張って歩いてみよう。ふんっ、ふんっ。

すると巨人が声をかける。

巨人
巨人

おい、そこの小さい男。そんなにひどく威張っているということは、相当な力持ちとみたぞ。んん?

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

え、ま、まあな。

巨人
巨人

面白い!
では、力比べをしようじゃないか。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

おう、いいとも。

巨人
巨人

俺は石を握りつぶせるぞ。

巨人は石を拾うと、大きなこぶしで本当に握りつぶしてしまった。石は粉々に砕けた。

巨人
巨人

どうだ!

貧しい仕立屋は、石を拾うふりをして、散歩の途中で食べようと思ってポケットに入れておいたチーズをこぶしの中に隠した。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

おまえさん、俺が今、石を拾ったのを見たよな?

巨人
巨人

ああ、見たぞ。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

石を砕くなんて誰でもできる。俺はこのこぶしの中の石から、汁を絞り出して見せる。

巨人
巨人

!!

仕立屋はこぶしをぎゅっと握りしめた。
チーズの汁が指の間からしたたりおちた。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

ふんっ!

巨人
巨人

な、なんてこった・・・

巨人は恐れをなし、逃げて行った。

握手比べ

貧しい仕立屋が、鉄の手袋を作った。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

おれは何でも作れるぞ!おれほどの腕を持つ仕立屋は他にはいない!わっはっは!

そこを巨人が通りかかる。

巨人
巨人

おい、おれほどの腕を持つものはいない、と言ったな。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

ああ、言ったとも。

巨人
巨人

では、握手をして、どちらが力が強いか、力比べをしようじゃないか。

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

・・・

巨人が手を差し出した。
仕立屋は鉄の手袋をはめた手を差し出した。
二人はがっちりと握手をした。

巨人
巨人

むっ、俺がこんなに力を入れているのに、お前はなんともないのか!?

貧しい仕立屋
貧しい仕立屋

ふん、痛くもかゆくもないね。

巨人
巨人

な、なんてこった・・・

巨人は恐れをなし、逃げていった。

補足など

この話型のカテゴリは「愚かな鬼(巨人、悪魔)の話」だし、このエピソードの本質はたぶん「勝てない相手に知恵で勝つ」ということだと思うのです。

力では勝てないけど、相手の弱点を利用すれば勝てるという。

しかし。
こんな理由付けをすると、昔ばなしがおもしろくなくなります。
無理やり教訓らしきものを読み出すことよりも、面白いことのほうが百倍も重要です。
昔ばなしは、語られる言葉がすべてです。
昔ばなしは嘘話です。
その不思議な世界を楽しむのです。

巨人が頭脳明晰で凶暴だったら本当に怖いだけの存在です。
巨人が愚かだからこそ、お話の中のひとりとして安心して迎え入れることができるのです。
だから「勝てない相手に知恵で勝つ」のじゃなくて、ただただ巨人の愚かさを面白がることでいいんだ、とも思います。