【いなくなった妻を捜す夫】

魔法昔話400【いなくなった妻を捜す夫】

妻はどこへ行った…?
Photo by Petr Ovralov on Unsplash

こんにちは。サイト管理人そだひさこです。

きょうは、「いなくなった妻を捜す夫」をご紹介します。
この話型は、異なる3つの型があるそうです。

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「いなくなった妻を捜す夫」あらすじ紹介

(1).
苦境にある男が、「苦境から救ってもらうかわりにこれから生まれる息子を悪魔に引き渡す」約束をする。
その約束の日、約束の場所に連れてこられるが、息子は神聖な力で守られているので悪魔は手出しできず、あきらめる。(話型810

一人放り出された息子は異国の城にたどり着く。
そこで魔法にかけられた姫と出会い、姫の魔法を解いて、結婚する。

やがて息子が一人で両親に会いに行くことになり、妻は魔法の指輪を与える。
ただし「指輪の力で妻を呼び寄せない」と約束させる。

息子は両親のもとにあらわれ、再開を喜ぶ。
しかし息子は妻に会いたがる母親のために、約束を破って妻を呼び寄せてしまう。

妻は夫から指輪を取り上げ、夫を残して消えてしまう。

夫は妻を捜しにいく。

途中で三人に道をたずね、3人目が妻の居場所を教えてくれる。
または、三人から魔法の品を手に入れ、それを使って妻のところに到着することができる。(話型518)

夫が妻を見つけたまさにそのとき、妻は別の男と結婚するところであった。
夫は自分が本当の夫であることを明かす。

– – –
(2).
姫の魔法を解くまでは(1)と同様。
しかし魔法が完全には解けず、姫は自分の故郷に戻ろうとする。

姫は男に直接自分の居場所を伝えようとするが、魔女に三度邪魔をされる。
姫は手紙を書いて自分を見つける方法を男に知らせる。

男は姫を捜しに行く。
(1)のように続く。

– – –
(3).
鳥の群れが岸に舞い降りて羽毛の服を脱ぎ、美しい娘たちになるのを、若者が目撃する。
娘たちが水浴びをしている間に、 若者はいちばん美しい娘の服を盗んで隠す。

その娘は帰れなくなり、若者と結婚する。
しかしやがて、二人の子どもが家の中から羽毛の服を見つける。

妻は服を着て、子どもとともに飛び去る。
妻は夫に自分の行き先を教える。

夫は妻を捜しに行く。
(1)と同じように続く。※一部の類和は話型313(呪的逃走)を含んでいる。

+++++
国際昔話話型カタログより(文章はそだひさこが書きました)。

まったく別の物語のような印象ですが(似たところがあるな、という程度?)、いなくなった妻を捜しに行く夫という共通の流れで同じ話型に分類されています。

昔話あるあるとでも言えそうな「まさにそのとき妻(夫、恋人)は別の男(女)と結婚する寸前だった」がここでも登場してます。^^;

【主人公が妻を探し出すまでの道のり】の図

まず1と2の図です。

途中、妻がいなくなる理由と妻の態度が違っています。

泥棒から入手する不思議な道具は、私が読んだ「リオンブルーノ」という話から。カタログでは「魔法の剣、魔法の頭巾、7マイルブーツ」となっていますが、あけるたびにお金が出てくる財布という魅惑的なアイテムが忘れられなくて…

つぎに、3の図です。

1や2とまったく別の話に見えますが、いなくなった妻を探すという核は同じなわけで。
分類むずかしいなー。

ちなみに今回から図のかき方をちょっと変えました。
今まで五角形をすべて同じ大きさでかいて「かけら」としていたんですが、かけらの流れのきまったパターンを「かたまり」として大きめの五角形でかいてみました。
この1の話だと冒頭の部分がひとつの話型として分類されていましたので、それを「かたまり」としてひとつの大きい五角形にしました。

それから、「方法」と「装飾」をプラスしました。
簡単な図にするのにはどうしても要点だけを書かねばならないので、どうやって探し出したのかというような「方法」や、昔話らしい、不思議で美しい、想像をかき立ててくれる言葉「装飾」にあたるものを入れられないのです。

でも「方法」や「装飾」こそが昔話を昔話らしくしてくれるものなので、なんとかして入れ込みたかったのです。

ただこれも、面積に限りがあるので、いくつかしか入れられないのが悩ましいですが。

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ストーリーを吹き出しで追ってみる_(1)

悪魔に引き渡されるはずの主人公が、悪魔から逃れる

貧しい男
貧しい男

貧しすぎて今日食べるものもない。
これでは一家そろって飢え死にだ!

悪魔
悪魔

困っているようだな。

どうだい、助けてやってもいいぞ。

貧しい男
貧しい男

ふん、どうやって。

悪魔
悪魔

おまえのところに、これからもし子どもが生まれたら、7歳になったときに俺によこせ。

そう約束すれば、今すぐ金持ちにしてやるぞ。

貧しい男
貧しい男

・・・うちにはもう子どもはたくさんいる。

もう子どもは生まれないだろう。

だったら約束しても大丈夫なのでは。

悪魔
悪魔

どうする?

貧しい男
貧しい男

あ、ああ、約束するよ。

男がそう言うと悪魔は消えた。
男はすぐに仕事がうまくいき、金が手に入った。

しかし、男が家に帰ると妻が言った。

貧しい男の妻
貧しい男の妻

ねえ、私また子どもができたのよ!

子が生まれ、約束の時が来た。
男は子を浜に連れていき、砂に神聖な円をかいて、息子をその中に座らせておいた。

息子が一人になってしばらくすると、悪魔があらわれた。
しかし悪魔は神聖な円の中に入れない。

悪魔
悪魔

おい、こっちへ出てこい。

子ども
子ども

嫌だよ。

この中で聖書を読んでいろっていう父の言いつけだ。

悪魔
悪魔

お前の父がお前を俺にくれると約束したんだぞ。

いいから出てこい。

子ども
子ども

嫌だよ。

悪魔
悪魔

出てこい。

子ども
子ども

嫌だよ。

長い時間が経ち、悪魔はあきらめて消えた。

姫と出会う

取り残された息子は、立ち上がって、どこへともなく歩き出した。

どんどん歩いて、やがて異国の城にたどり着いた。
そこには、魔法にかけられて醜い姿になった姫がいた。

鬼女
鬼女

お腹が空いているのなら、お食事をしていきなさいな。

姫は腹ペコの息子に食事をさせてくれた。

主人公が姫の魔法を解き、結婚する

姫は言った。

鬼女
鬼女

私は魔女に魔法をかけられてこんな姿になっているんです。

子ども
子ども

どうすれば魔法が解けるの?

鬼女
鬼女

あなたがこの呪われた城で三日三晩、幽霊の恐怖に耐えてくれたら、私の魔法は解けます。

子ども
子ども

それなら、僕はきっと魔法を解いてみせるよ!

息子は三日三晩、幽霊の恐怖に耐えた。
魔法は解けて、姫は美しい姿になった。

姫

ありがとう!

息子は姫とともに城に住み、立派に成長し、姫と結婚した。

妻が主人公の元を去る

息子は、年老いたであろう両親に会いたくなった。妻は息子が家に帰るのを許し、魔法の指輪をくれた。

姫

この指輪に願いを言えば、あなたは一瞬でご両親の家に帰れます。

ゆっくりしていらっしゃい。

姫

でも、一つだけ約束して。
けっして、けっしてその指輪で私を呼び寄せないでください。

姫

もし約束を破ったら、どうなっても知りませんよ。

息子は指輪に言った。

子ども
子ども

指輪よ、私を両親のいる家へ。

するともう、息子は両親の前に姿をあらわしていた。

貧しい男の妻
貧しい男の妻

まあ、おまえはもしや、7歳のときに悪魔に連れて行かれた私の息子!

貧しい男
貧しい男

生きていたのか!ああ、神様!

両親と息子は涙を流して再会を喜んだ。

貧しい男
貧しい男

おまえ、立派な格好をしているが、どこでどうしていたんだい。

息子は今までのことを話して聞かせた。

貧しい男の妻
貧しい男の妻

まあまあ、きれいなお姫さまをお嫁さんにしたのかい。

なんと嬉しいこと。

おまえのお嫁さんにひと目会いたいよ。

子ども
子ども

お母さん、残念だけど、それはできません。

貧しい男の妻
貧しい男の妻

おや、どうして。

その指輪でおまえがここにあらわれたみたいに、その指輪でお嫁さんを連れてこられないのかい。

子ども
子ども

だめですよ、お母さん。

妻と約束したんです。

貧しい男の妻
貧しい男の妻

まあ、まあ、なんて残念なことだろうねえ。

母親は目に涙を浮かべて残念がった。
それを見た息子はいった。

子ども
子ども

お母さん、一度だけですよ。

指輪よ、私の妻をここへ。

妻が姿をあらわした。
妻は母親に挨拶をしたあと、夫に言った。

姫

あんなに約束したのに、あなたは約束を破ったのね。

妻は夫の指から指輪を取り上げた。

姫

もうあなたのことは知りません。

そして夫を残して消えてしまった。

主人公は妻を捜し出す

夫は妻を捜すために旅に出た。
しかしどこへ行けばいいのかわからない。

子ども
子ども

私の妻がどこにいるか知りませんか。

ウサギ
ウサギ

知らないね。

子ども
子ども

私の妻がどこにいるか知りませんか。

キツネ
キツネ

知ったこっちゃないね。

子ども
子ども

私の妻がどこにいるか知りませんか。

ドラゴン
ドラゴン

知ってるよ。
あんたの奥さんは、ここから七年間歩いて行ったところにあるガラスの山の古い城にいるよ。

子ども
子ども

本当ですか!ありがとう!

夫は歩き続けた。
すると、三人の泥棒が品物の取り分でもめているところに出くわした。

泥棒たちは夫を呼び止めた。

建築家
建築家

おい、そこを行く人。
すまないが、俺たちにこの品物をうまい具合に分けてはくれないかね。

子ども
子ども

ああ、いいとも。
でもその前に、品物をよく見せてくれ。
これは何だい?

建築家
建築家

それは、開けるたびにお金が出てくる財布だ。

夫は財布をあけた。

子ども
子ども

なるほど、お金がたくさん入っている。

子ども
子ども

では、これは?

息子
息子

それは、風より速く走れるブーツだ。

夫はブーツを履いた。

子ども
子ども

なるほど。いい履き心地だ。

子ども
子ども

では、これは。

息子
息子

それは、姿を消せるマントだ。

夫はマントを身に着けた。

子ども
子ども

どれどれ。どうだい、私の姿が見えるかい。

息子
息子

いや、見えないな。

息子
息子

・・・

息子
息子

おい、どこにいるんだ。

息子
息子

・・・

息子
息子

あいつ、俺たちの品物を持って逃げやがった!

夫は姿を消したまま、ブーツの力でガラスの山に到着していた。

子ども
子ども

私の妻はどこだ!

しかしそのときちょうど、
妻は他の男と結婚式をあげようとしていた。

夫はマントを脱いで姿をあらわした。

子ども
子ども

待ってくれ!
その人の夫はこの私だ!

姫

まあ!
こんなところまで私を捜して来てくれたの!

嬉しいわ!

ふたりはふたたび夫婦になり、それからずっと幸せに暮らした。

Little boy
Little boy

めでたし、めでたし。

補足など

(1)の話のみを吹き出しにしてみました。だいたいこんな流れかなという感じで。

私が読んだリオンブルーノという話のラストでは、怒っていなくなった姫は結局夫が恋しくて病気になっていて、そこに夫があらわれて病気が治り仲直りもしてめでたしめでたしという話でした。
なんというか、イタリアっぽいお話だなーと思いました。

それから姫との出会いのところは、悪魔が去った後すぐにタカ姫が飛んできて子どもを城に連れて行き、一緒に暮らし、やがて結婚するという展開でした。
この子どもはタカ姫によほど気に入られていたんですねー。

ところが結婚した後、夫は両親を訪ねた後戻ってくる途中で「剣の試合で優勝したものに娘をやる」というイベントに出場してしまいます。
指輪の力で優勝していい気分になりたいがために。
そして優勝したあと、自分には姫より美しい妻がいるから姫をもらうわけにはいかないと言い、指輪で妻を呼び寄せます。

妻は怒って指輪を取り上げ消えてしまい、姫は恥ずかしさで泣き叫び、「指輪の力で優勝したのか!」と皆の怒りを買ってボコボコにされ放り出されるという、ものすごいサイテー男ぶりです。

どんな話だよ…^^;

(3)は日本にも似た話があるな、とピンときます。天女が羽衣を脱いで松の枝にかけておいたのを、主人公が隠してしまう…という話でしたよねたしか。←うろ覚え

松の枝にかけておくとか、なんか本当にありそうな感じがいいなと思います。羽衣という言葉もとってもきれい。